ビジネスホテルの廊下を歩く足音が静かに響く。深夜1時、ようやく最後の予約客の部屋に到着した。今日も長い1日だったわ、と肩を回しながらドアをノックする。「失礼します。マッサージでお伺いしました花音と申します」ドアが開くと、そこには緊張した面持ちの若い男性が...
合宿所のロビーでクーラーの風が肌に触れる。夏の終わりの熱気がまだ残る夜、テニス部の打ち上げは終わったはずだった。でも先輩たちの「お疲れ様飲み」に巻き込まれて、気がつけば男子マネージャーの翔太先輩の部屋にいた。「莉央も飲みなよ！」「私、お酒ダメなんです…...
あの日から私の日常は一変した。大学の課題に追われる合間、スマホに届いたメッセージを見て胸が高鳴る。相手は年の離れた義理の弟、勇翔。両親の再婚で半年前に家族になった十九歳の彼は、スポーツ推薦で入学したばかりの体育会系男子だ。「萌さん、今日の夕方って空いて...
あの日は幼馴染の結婚式だった。式が終わり、披露宴の受付を手伝うことになった私は、少し早めに会場入りして準備を始めた。新郎側の受付は私一人で、新婦側には見知らぬ綺麗な女性が一人ついた。私たちはほとんど会話もなく、ただ時間が過ぎるのを待っていた。披露宴開始...
あの日、歯科医院の駐車場で待っていると、希さんの姿が見えた。いつもより俯き加減で、ハイヒールの音もどこか重たかった。彼女は24歳の歯科衛生士で、僕より6歳年上。178センチのスレンダーな身体は、今日もブラックのタイトスカートとシルクブラウスで完璧に着こなされ...
梅雨の合間の蒸し暑い午後、大学の図書館は人気が少なく、静寂が重くのしかかっていた。私は法学部三年の柚葉。就活のストレスから逃れるように、ほぼ毎日この席に潜り込んでいた。向かいの席には、いつも経済学部の龍先輩が座っている。端正な顔立ちに、白シャツの袖まく...
その日も妻の未来は深夜まで帰ってこなかった。28歳の美容師である彼女は最近、同じサロンで働く23歳の新人スタイリスト・翔太と親しくなっているらしい。僕・龍之介(32歳・システムエンジニア)は自宅のソファでスマホを握りしめ、未来のSNSを更新ごとにチェックしていた。...
その日も朝から夏日のような陽気で、エアコンの効いたオフィスから一歩外に出ると、湿った空気が肌にまとわりついた。私は営業事務の杏、25歳。半年前に35歳の湊と結婚した。バツイチの彼は、前妻のことは「価値観が合わなかった」と淡々と語るだけで、私には初婚のように...
夏の猛暑が窓ガラスをゆらす午後、姉の優奈の新居の片付けを手伝っていたら、二人ともTシャツが汗で張り付くほどになった。エアコンは段ボールの中に埋もれたままだ。優奈が汗で光る鎖骨を拭いながら言った。「もう、びしょびしょ…先にお風呂、借りていい？あなたもさっぱ...
高校三年の修学旅行最終日、京都の旅館で僕は人生がひっくり返る瞬間を経験した。クラスで一番真面目だと言われていた六人——僕、泰、愛結、翔太、莉子、優衣——がひとつの部屋に集まっていた。他の部屋からは酒盛りの騒ぎ声が聞こえるのに、ここだけは静かで、まるで別...
スーパーのレジ打ちのバイトは、単調な日常に少しの刺激を求めた私の、ささやかな冒険だった。名前は陽、三十三歳。二人の娘を育てる専業主婦だ。夫は優しいけど、何かが足りない。そんな漠然とした物足りなさを、この仕事で埋められると思った。教育係の祥子さんは親切で...
今日も残業で疲れた体を引きずりながら、エレベーターを降りた。22時を回ったオフィスビルは死んだように静かで、自分の足音だけが廊下に反響する。パソコンのファン音がやんだ後の沈黙は、いつもより深く感じられた。「湊さん、お疲れ様です」振り返ると、隣の部署の心寧...
週末の夜、携帯が鳴ったのはデートから帰ってきてまだ一時間も経っていない頃だった。画面には彼女の陽ちゃんの名前が光っている。出ると、陽ちゃんの声ではなく、彼女の上司である拓也さんの落ち着いた声が聞こえた。「旭くん？すまない、陽さんがちょっと飲みすぎてしま...
会社で一番厳しいと言われる先輩の結さんは、いつもキリッとしたスーツ姿で、誰よりも仕事ができる憧れの存在だった。僕が入社してから何度も叱られてばかりで、正直怖いと思っていた。ある日、仕事が一段落した金曜の夜、たまたま二人きりで残業することになって、結さん...
梅雨のじめついた空気が教室に張りついていた。6月の雨は冷たく、傘を忘れた僕は下校時に途方に暮れていた。委員会活動で遅くなり、貸し出し傘は全てなくなっていた。「悠斗くん、一緒に帰らない？」ふと聞こえたのはクラスで孤立しがちな心陽の声だった。彼女は「菌」とい...
彼の存在は、空気を変えた。デート中にばったり会った会社の後輩・ミオとその男友達、タケル。タケルは初対面だったのに、なぜか視線が離せなかった。爽やかな髪型に、整った顔立ち。笑うと少しだけ見える八重歯が、清潔感の中にたまらない危険な魅力を漂わせていた。四人...
今日も街は変わらず人通りが多かった。平日の昼下がり、私は目的もなく都心の雑踏に身を委ねていた。主人を亡くして一年、大きな家に一人でいるのは耐え難く、時折こんな風に外出せずにはいられなくなる。生活に困るほどではないが、心の空洞は埋まらない。ふと目に入った...
夕暮れのキャンプ場に響く虫の声。焚き火の揺らめきが、私たち6人の顔を赤く照らしていた。妻・美緒（32歳）がグラスを傾けるたびに、ワインレッドの液体が彼女の唇を濡らす。隣では佐藤夫妻の悠（35歳）と莉子（30歳）、そして高橋夫妻の健太（38歳）と彩（33歳）がくつろ...
夏の蒸し暑い夜、コンビニの雑誌コーナーで時間を潰していた。エアコンの効いた店内でスマホをいじりながら、ふと入り口に視線を向けると、三人の女子大生が騒ぎながら入ってきた。 「あー、もう！みさきちゃん本当に酔いすぎだよ～」 「大丈夫だって、そのうち起きるで...
その日は会社の忘年会だった。部署のメンバーが集まる中、いつもキツめの態度で知られる同僚の美咲（25歳）が、珍しく酔い潰れていた。普段は鋭い言葉で周囲を圧倒する彼女だが、今は頬を赤らめ、ふらふらと歩くのもままならない状態だ。 「ちょっと…無理しすぎじゃない...
