2025年09月08日
マジックミラーの向こうで、彼女は知らない欲望に濡れていった
その日は朝から雨が降っていて、店内には古いレコードの匂いが漂っていた。僕、颯真(24歳)は大学の休みを利用して、親戚の経営するセレクトショップでアルバイトをしていた。普段は閑散としているこの店が、連休中だけはなぜか賑わうらしい。確かに、午前中から若い女性客がちらほらと訪れていた。
「あの、これ試着できますか?」
声の主は、清楚な白いワンピースを手にした女性だった。長い黒髪が肩にかかり、きっと社会人になってまだ数年くらいだろうか。名札には「愛」と書かれている。彼女は僕が教えた試着室の方へ歩いていった。
僕はレジカウンターの下に隠した小型モニターに目をやる。先週、倉庫整理をしている時に偶然見つけたのだ。どうやら試着室に微型カメラが仕掛けられているらしい。最初は驚いたが、今ではすっかり慣れていた。画角を切り替えると、彼女がワンピースのファスナーを下ろすところが映し出される。
彼女の指先が背中を伝い、ゆっくりと布を剥いでいく。下にはレースのついた生成りのブラジャーと、それに合わせたビキニパンツが現れた。肌は驚くほど白く、腰のくびれがくっきりと描かれている。思わず息を飲む。
「……きれいだな」
彼女は鏡の前で少し恥ずかしそうに俯き、自分の体を確かめるように触れた。指が鎖骨を撫で、わずかに膨らんだ胸の谷間を掠める。モニター越しでも、その肌の質感まで伝わってくるようだった。
突然、彼女がこちらの方――マジックミラーの真正面に歩いてくる。距離はわずか数十センチ。息が詰まるほど接近した彼女の瞳は、どこか潤んで見えた。
「……誰か、見てる?」
彼女の囁くような声が、なぜか直接耳元に響いたような錯覚に陥る。鼓動が一気に高鳴った。ばれたのか? いや、ありえない。設置は完璧だ。
しかし彼女は微笑むと、ゆっくりと手を下ろし、パンツの端に指をかけ始めた。
「見てるんでしょ……? 私、感じちゃう」
それはもう覗き見ている側の欲望など軽く超越した、能動的な誘惑だった。彼女はパンツをずらすと、剃り込まれたわずかな毛と、ぷっくりと膨らんだ陰唇を露わにした。指先で軽く触れ、かすかに震える。
「あん……っ」
甘い吐息がモニターを通じて聞こえてくるような気がした。彼女は片手で胸を揉みながら、もう一方の手で陰核を弄ぶ。腰をくねらせ、鏡に映った自分自身と目を合わせながら、だらしなく股間を滴らせていく。
僕は完全に硬くなった下半身を押さえ、その光景に釘付けだ。彼女は突然、マジックミラーに手をつき、熱を帯びた息をガラスに吐きかける。
「中に入って……お願い。私、イかせて」
理性など吹き飛んだ。僕は倉庫のドアを開け、マジックミラーの向こう側――試着室へと足を踏み入れた。彼女は少しも驚かず、むしろ満足げに笑った。
「やっぱり……颯真さんだったんだ」
どうして僕の名前を? 疑問はあるが、今はそれどころではない。彼女はすぐに僕のシャツにしがみつき、熱い唇を重ねてきた。甘いリップグロスの味がした。舌が絡み合い、唾が糸を引く。
「早く……私、濡れちゃってるから」
僕は彼女を壁際に押し当て、スカートをまくり上げる。下着はもうずたずただ。そのまま一気に腰を突き入れると、彼女の内部は驚くほど熱く、そして締まっていた。
「あっ……! 入、入った……っ」
彼女の喘ぎ声が試着室に響く。僕は彼女の脚を抱え、激しくピストンを繰り返す。毎回、最深部まで届くような突き上げに、彼女は狂ったように首を振り、涎を垂らす。
「颯真さんの……おちんちん、気持ちいい……っもっと、もっと激しくして……」
彼女の言葉がさらに僕を興奮させた。体位を変え、後ろから再度挿入する。彼女の背中に汗が光っている。鏡に映る彼女のとろんとした表情を見ながら、腰の動きを加速させる。
「イく……イっちゃう……っ」
彼女の内部が痙攣し、熱い液体が溢れ出る。その感触に僕も耐えきれず、深く深く中で解放した。
しばらく抱き合った後、彼女は着替え始めた。しかし、それは終わりではなく、彼女は僕の耳元で囁いた。
「これからも……ここで会いましょうね。私、あなたに見られながらするのが……一番好きなんだから」
彼女は去っていったが、その言葉は確かに僕への呪いだった。その後も彼女はたびたび店を訪れ、毎回のようにマジックミラーの前で自慰を見せ、そして僕を試着室へと誘った。
ある日、彼女が来たとき、僕は彼女の左手の薬指に光るものを見つけた。結婚指輪だ。彼女は気づいた僕の視線に、悪戯っぽく笑った。
「バレちゃった? でも……彼より、颯真さんの方が気持ち良くしてくれるもの」
それからはさらに罪深い関係が続いた。しかしある晴れた日、彼女は突然来なくなった。数週間後、僕は店を解雇された。理由は「試着室への不法カメラ設置」だ。どうやら彼女は最初から全てを知っていて、僕を罠にはめたらしい。彼女の正体は、実は店のオーナーの妻だったのだ。
今でもあの試着室の熱い吐息と、彼女の甘い罠を思い出す。あの日、マジックミラーの向こうで微笑んだ彼女の目は、完全に僕を飼い慣らす計画に満ちていたのだ。










